春の小川

鮎原人

2010年03月19日 16:07

珍しく、散歩に出かけた。   陽気も良く、ちょっと遠出。   途中小川に出会う。   このあたりは近年宅地化が進み、直線的に区画された地形が悲しく映る。   この川もかってこの街が「村」だった頃、葦の群生の中を蛇行して流れる優しい里川だった。   その名を『天神川』と呼ぶ。   だけどもその詩興を呼び起こす名の所有者も、今ではこの有様だ。   往時はその内に小魚を抱き、周辺の草はらでは小鳥を育んでいた天神も、今や面影は無い。   臭いに耐えながら岸まで降りてみた。   と、どこからともなく鳥の声が。   不意の疾風に目を閉じると、訪れた数瞬の静寂の中で、さらさらと流れる瀬音に気付かされた。   それは大河の雄々しさには及びもつかないが、確かに流れはそこに有るんだと確信するに足るものだった。   しばらく腰を下ろし目をつぶって聞き入った。  その音は人間に邪魔されても自らの道を頑なに進む  『天神』  の衿持のように思えた。  まるで誰かに気づいてくれと言わんばかりに。 

目を塞ぐと却って気づくこともある。

 ニギハヤミコハクヌシを思い出した。


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